活動レポート
カンボジア
2026.08.24

カンボジアで医療活動を行うことに魅力を感じ、2021年から現在まで、日本とカンボジアを半年ずつ行き来しながら活動を続けている長期ボランティアの松永明宏医師。
消化器外科・一般外科の医師として現地の医療に携わり、カンボジア人スタッフ、日本人スタッフの双方から厚い信頼を寄せられています。
2024年には吊り上げ式による腹腔鏡手術を導入し、カンボジア人医師への技術移転・人材育成に励んできました。
今回は吊り上げ式腹腔鏡手術の導入から現在までの歩みや今後導入を目指している気腹式腹腔鏡手術、そしてカンボジアの医療者育成にかける想いについて伺いました。
腹腔鏡手術を始めて現在までに、主に腹腔鏡下胆嚢摘出手術を60例ほど実施しました。
他に腹腔鏡で虫垂切除や人工肛門造設もやりましたが、吊り上げ式だと視野が狭くて、なかなか難しいので今は胆嚢摘出手術のみを行っています。
吊り上げ式は視野が狭いんですよね。
気腹式にするとお腹が膨らんで、ワーキングスペースが広い中で安全に手術することができます。
吊り上げ式でも空間は確保できるんですけども、気腹式に比べると空間が狭いので、その狭いスペースの中でやらなくちゃならないというやりづらさがあります。
今は胆嚢摘出手術しかやってませんので、そんなに炎症が強くない症例であれば、セッティングも含めて私がいなくても腹腔鏡下胆嚢摘出手術はカンボジア人スタッフだけでできます。

今の吊り上げ式で胆嚢を摘出することに関しては、カンボジア人スタッフだけでできます。
ただ、腹腔鏡では本当はもっといろんな手術ができるものなんですけども、うちはまだ胆嚢しかやっていません。
気腹式を導入しても、胆嚢摘出手術であればおそらく問題なくできると思います。
ただ、それ以外の手術で問題になるのは、やっぱりお金です。
例えば、腹腔鏡下の大腸手術や胃の手術では、自動縫合器や超音波凝固切開装置など、日本では当たり前に使われている機器が必要になりますが、どちらも非常に高価です。
一つの方法として、その手術を受ける患者さんに実費を負担してもらうという考え方があります。
ただ、そうすると払える人は腹腔鏡手術を受けられるけれど、払えない人は受けられなくなってしまいます。
それはジャパンハートとしての基本理念に反するのではないかという問題があります。
技術的には次の段階へ進める状況ですが、今後は費用の問題と誰もが公平に腹腔鏡手術を受けられる環境をどう実現していくかが大きな課題だと思っています。

必要なことはやはり経験ですよね。
これは皆さん言ってることですけど、やっぱり手術は質より量。数をやるってことが、全てなんですね。
手術を1000例やった人に、5例しかやってない人はどうしても勝てないです。
また、手術を行った経験はもちろんですが、見た経験や勉強する機会を増やしてあげたいと思っています。
今だとインターネットでも勉強できますが、インターネットで勉強しようとするモチベーションを得るためには、学会とかに行った方がいいと思います。
そうすることで勉強を始めるきっかけを作れるのかなと。
学会に行くと外科の先生たちが世界中から集まってきていて、こんなことができるんだとか、すごい上手い人とかすごい頭がいい人とか、すごい勉強している人とかがいて圧倒されるんですけど、そういう中でも、自分と同じようなことに悩んでいる人が発表していて、「そういう時にどうやってやっているのか」っていうのを学ぶことも非常に面白いと思います。

6年前にカンボジアに来たときはただ海外医療支援をしたいと思って、ジャパンハートを見つけて参加しました。
その時は初めてカンボジアに来たので、特にカンボジアに愛着があったわけではなかったんです。
やっぱりこう6年とか継続して来ているうちに、愛着が湧くんですね。
あとカンボジアの人たちから学んだことが非常に多いです。
カンボジアはいい国だなと思っていますし、カンボジアにはお世話になったっていう想いが非常に強いですね。
恩返しまではいかないけど、役に立てればなっていう想いですね。

今後は気腹式腹腔鏡手術を軌道にのせたいと思っています。
今やってる吊り上げ式みたいな感じで、みんなが気軽にやれるようになってほしいなって思ってますね。
私は7月に日本に帰りますが、帰った後、誰かがやってくれたらそれでいいですね。
私がやらなくてもいいんです。やってくれる人がいたらそれでいいんです。
カンボジア人スタッフが気腹式腹腔鏡手術に慣れて、自分たちでできるようになり、費用の問題もクリアしていけるようになればいいなと思っています。
自分が自分がというよりも、カンボジア人スタッフたちが自分たちの力でできるように、結果としてなればいいですね。
もしこの半年間にそういう進展がなかった場合は1月に戻ってきて、気腹式腹腔鏡手術の導入に取り組みたいと思っています。

「私がいなくなっても大丈夫だなっていうのを見たときに、やってよかったと感じる」と語ってくださった松永医師。
なるべく現地医療者に手術を任せ、その成長を見守る姿からは、カンボジア人医師たちに多くの経験を積み、成長してほしいという強い想いが伝わってきます。
松永医師の技術や経験、そして医療に対する想いは、少しずつカンボジア人スタッフへと受け継がれています。
自身が技術を提供するのではなく、カンボジア人スタッフが自らの力で手術を行い、その技術を次の世代へと受け継いでいける環境をつくること。それこそが、松永医師が目指す医療支援の形なのかもしれません。
長期学生インターン 岩橋 雅
▼松永医師の過去の活動レポートはこちらから
【Voices of Japan Heart】Vol.3 松永 明宏 医師(消化器外科、一般外科)
【カンボジア手術活動】カンボジアで腹腔鏡手術を実現するまでのチャレンジ