活動レポート
カンボジア
2026.06.23
2026年5月5日、ジャパンハートアジア小児医療センターにて小児がんの子どもたちを対象に、院内活動として初めて病棟から外に出て遊ぶ時間を設けました。
「外」とは、主に病院内にあるプレイグラウンドやセンターサークルです。
小児がんを患う子どもたちは、入院期間中、ほぼすべての時間を病棟の中のみで過ごしています。
免疫力の低下により感染リスクが高いため、外には出られません。
その入院生活は3か月から1年ほどと長期にわたります。
この活動は閉鎖された環境の中で過ごす子どもたちにとって、少しでも病棟の外で過ごせる時間を作ることで、たのしさやよろこびの体験を増やし、日々の生活をより明るく健やかに過ごしてほしい、という想いから始まりました。
5月5日は日本では「こどもの日」。この日をはじめの一歩として、「子どもたちにとってよりよい体験の機会を」という目的のもと、毎週「外遊び」の時間を設ける活動に取り組んでいます。


「ずっとかわいそうだなと思っていました」
自由に外に出られない小児がんの子どもたちについて、そう思いを語るのは、ジャパンハート創設者 吉岡秀人医師です。
外の空気を自由に吸うこともできず、太陽の光を直接浴びることもできない。
強い副作用を伴う抗がん剤治療を受けながら、長い間、外にも出られず狭い病棟の中のみで過ごす子どもたちの姿は、本当に正しい医療の姿なのかーーそう考えるようになったといいます。
「現代人が昔の治療方法をその時代においては最先端であっても『野蛮だ』と感じることがあるように、未来の人々も現在の治療をそう振り返ることがあるかもしれない。」と話す吉岡医師。
医療は日々進歩しています。これから数十年経った未来では、副作用の少ない抗がん剤が出てきたり、よりよい治療方法が出てきたりするかもしれません。
小児がんの治療を受ける子どもたちが、太陽のもとで遊ぶことも当たり前の世の中になるかもしれません。
また、「外に出る機会を奪われることがどれほどのストレスになるか、コロナの時に実際に隔離されてみて、あらためて考えた」と、吉岡医師は当時の心境を話してくれました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、外に出ることができない生活に不自由さや精神的な負担を感じた人も多くいたのではないかと思います。
そして、小児がんの子どもたちは、そうした生活の中、がんと闘っているのです。

この取り組みを実現するにあたり、課題として挙げられたのは、小児がんの子どもたちの安全をどのように確保するかでした。
治療中の子どもたちは免疫力が低下しているため、感染症への十分な配慮が欠かせません。
そのため、まずは子どもたちを病棟の外へ連れ出すにあたって必要なことを一つ一つ洗い出し、物品管理や安全管理の手順づくりを進めました。
プレイグラウンドやセンターサークルは外来患者も利用するため、感染症を持つ患者が訪れる可能性もあります。
そこで、利用エリアのゾーニングや動線の管理、遊具などの子どもたちの手が触れる場所の消毒などを徹底し、感染リスクをできる限り低減できる体制を整えました。
現在も実施を重ねながら運用方法の改善を行っています。
子どもたちは病棟の外で過ごすことができる時間を楽しみにしています。
安心して思い切り遊べる時間をこれからも作っていけるよう、感染対策や移動時の手順、物品管理などをさらに整理し、安全管理を仕組みとして定着させていきます。
安全と遊びの機会、そのどちらも継続的に両立できる体制づくりを目指していきます。
すべての小児がんの子どもたちを治せるわけではない。カンボジアを含む低・中所得国での小児がんの生存率は、30%未満※といわれています。
※出典:World Health Organization 2026 Fact sheets”Childhood cancer” より引用
「救えない命がある、その事実を医療者はもっと謙虚に受けとめないといけない」と語る吉岡医師。
病棟の中で長くつらい闘病生活を続け、それでもすべての子どもたちが元気に退院できるわけではありません。
子どもたちが「走りたい」「遊びたい」といえるうちにそういう機会をできるかぎり作ってあげたい。
この「外遊び」の活動には、そういった思いも込められています。


小児がんの治療中の子どもたちが安全に外遊びをする上では、解決すべき課題が数多くあります。
それに対し、吉岡医師は「医療行為をすることだけが医療者の仕事ではない。
みんなの努力で達成できる可能性があるのであれば、どうすれば安全に実現できるかをみんなで考えることが大切だ」と繰り返しわたしたちに語りかけます。
やらないという決断をするのは簡単、でもそれでは誰も幸せにならないのだ、と。
「すべての人が、生まれてきて良かったと思える世界を実現する。」
わたしたちジャパンハートは、このミッションの達成に向け、これからも全力で邁進いたします。
長期学生インターン 瀬﨑未彩
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