活動レポート
支援者の声
2026.06.25

ジャパンハートは、完全栄養の主食を開発・販売するベースフード株式会社と、活動の舞台である東南アジアの各拠点へ製品の提供を主としたパートナーシップ契約を結びました。
医療業務の合間に手軽にパランスのよい栄養を補えるパンなどを取り入れることで、医療・支援活動を下支えすることを目指し、その取り組みの一つとしてベースフードの「BASE UP PROJECT」が掲げる心身の健康の“ベースアップ”を体現するものです。
この機会に、ベースフードの代表取締役である橋本舜さんと、ジャパンハート理事長の吉岡春菜の対談が実現しました。前編に引き続き、後編をお送りします。
※本記事はベースフード株式会社と特定非営利活動法人ジャパンハートの共同配信記事となります

Q:2025年には、ジャパンハート(以下、JH)念願の「アジア小児医療センター」がカンボジア・プノンペンに開院しました。これからもJHの活動を継続するため、どのようなことが必要だと思われますか?
吉岡:継続して治療を受けてくれる環境として、子どもが来院したくなるような病院を目指しているんです。というのも、完治しても5年くらい経過観察しなくてはいけないので、患者さん家族は交通費などを工面して来院している場合もあります。その物理的な生活の負担を越えて通院してもらうには、患者さん自身が通院したくなる気持ちが大切だと思うんです。
橋本:日本の病院だと、行って楽しい病院ってあまり聞かないですね。そういう考え方って、むしろ日本だとタブーになっているかもしれないと思います。私は、ベースフードという健康のための食品を販売していますが、チョコパンやカップ焼きそばのような、ジャンクフードと思われていたような食品として提供しています。結局、おいしいから不健康なものを食べてしまうのって、心と体の健康のどちらかの選択を迫られるから、前に進まなくなってしまうのかなと思います。
その点、JHは楽しさや明るい精神性を大事にしていますよね。ジャパンハートという名称って言いえて妙で、昔ながら日本人が大切にしてきた心持ち(ハート)的なところがあって、それがミャンマーやカンボジアで子どもを治す原動力になっていると同時に、その活動報告を聞いて支援者である日本人のハートがまた癒されたり励まされたりしている、と思うんです。

吉岡:国内では、小児がんの子どもとご家族のお出かけを医療スタッフが同行してサポートする「スマイルスマイルプロジェクト」という活動をJHで行っているのですが、病状が思わしくなく、胸水が溜まってトイレの時しか座れない子でも、旅行中はにはものすごく食べるし、よく笑うんです。心の持ちようって、本当に大切なんだなって思いますね。
だからこそ、親御さんと子どもの心が救われることをやりたいし、活動していることで自分も救われていると思うんです。ご家族が自発的に動いて、子どもが輝く場をつくれたことが、本人が亡くなった後も「できることがあった」事実を作ることができる。治療行為ではないが、おっしゃられたようなJHのマインドらしい活動だと思うんです。
橋本:私も、プライベートを犠牲にして、仕事をしなくてはいけないとか、何かを犠牲にして何かを得るという発想はあまり好きじゃないんです。プライベートを楽しむことによって仕事がはかどる方がむしろ多いし、楽しんでやっている方が成果が出ると思うんです。「こんなに我慢しているんだから」という自己犠牲よりも、楽しむことを求めてもいいかなと思います。

Q:今回のような企業と社会貢献セクターの協働についてのお考えや、可能性についてお聞かせください。
橋本:支援して頂いているとおっしゃりますが、そもそも支援されていると思っているのは、JHの主観だけかもしれない、と思います。僕は「支援している」とあまり思っていないです。自分の場合も対価がビジネスに返ってくるという意味ではなく、何かしら自分たちのハート(心)のためにやっていると思っていて、一方的に支援する関係だと思っていません。寄付って個人の選択じゃないですか。自分はこういうスタンス、アイデンティティですと、各自が意思表明していることだとも思うんです。
吉岡:継続的にご支援くださる企業の方々は、そうおっしゃる方が多いと思います。企業側としては、私たちの代わりにやってくれてありがとう。だから「足りないものはないか」と助けてくれるんですね。私たちもご支援いただいている皆さまに、何かしら支援のようなお返しができていたら嬉しいです。
橋本:お医者さんと患者さんの立場でも、医者が患者さんを支援しますが、患者さんがお医者さんに感謝することが多い、と思います。また、患者さんが頑張っている姿や元気になっている姿は、お医者さんにとっても励みになっているのではないかなとも思いますしね。
吉岡:患者さんが治ってくれる姿は、とてもうれしいですね。かけがえのないものをもらっていると感じます。今回の協働は支援というよりも、医療の質をどう支えるかという部分に一緒に向き合っていただいている感覚があるんです。医療は食や生活といった基盤があって初めて成り立つもの。そうした見えにくいけれど大切な部分に、関わっていただいていることに、とても意味のある試みだと感じています。「支援する・される」という関係ではなく、同じ方向を見据えるパートナー感が、私にはありますね。

橋本:秀人先生って仏陀みたいだと思っていて。不思議なんですよ、行動が。一番不思議なのは、飛行機などの行き帰りの時間に、映画も音楽も聴かないし、本も読まない。何もインプットしない、とおっしゃっていました。10時間近く無。修行僧みたい(笑)
不思議と秀人先生とは縁があって、会食の機会でも席が目の前だったり、実家も近い。先生が東京で宿泊するホテルが私の家の近くだったので2人で地下鉄に乗って帰ったり、空港でばったり会ったことまであるんです。カンボジア・ミャンマー視察ツアーに参加したときも含めて、さまざまな場面で側で話が聞けたんです。
吉岡:色々な場所で偶然会う話は、本人も嬉しそうに話していました(笑)
橋本:あまり情報ソースからインプットせずに、あの思考の深さはどこから来るんだろうと思っていたんですが、自分の実体験で見出しているんでしょうね。すごく凝縮された経験を現地で体験して、大変なことも多いはずなのに「患者さんが僕が治したことを知らない状態で、元気な姿を傍から見るのが、無限の幸せを感じる」とおっしゃるんです。秀人先生の言動や姿を観察すると、自分も生き方をアップデートしないとなと思わされます。

吉岡:そう思ってくれる人がいることで、吉岡(秀人)をはじめ、私たちは現場に入り、課題に直接向き合うことの励みになりますね。一方で、やっぱり企業には培ってきた技術や資源、そしてスピードがあることは事実です。それぞれの強みが重なったときの“共創”の関係が、より重要になっていくのではないかと感じています。
橋本:日本がバブル時代に、ミャンマーに単身渡航し、子どもを助け続けている人がいるJHには今までの日本の医療の考え方とは全然違う価値観と経験がありますよね。その価値観が根付いた病院が日本にもできたら、大きなインパクトがあると思います。高齢化していく日本社会の一方で、100歳まで生きたいという人の数が世界に比べて少ない。行きたくなる病院を、途上国だけでなく日本でも実現していくのは大きいことだと感じますね。

Q:それでは最後に、お互いの目指すべき今後の展望などをお教えください。
橋本:10年かけて培ってきた私たちのプロダクトも、栄養バランスと同時に美味しさのレベルも、かなりのところまできたと思います。つぎの10年のステップとしては、商品にかかるコストを低くくしていきたいと考えています。そのためには社会システムを多少とも変えてく必要もあります。米にしてみても、加工された白米より未加工の玄米の価格が高いのは、現代の社会システムが白米に最適化されている加工流通システムだからです。現状の当たり前を検証しつつ改善していきながら、健康に良い原料を安く仕入れることができ、付加価値も高められるサプライムチェーンやバリューチェーンを作っていかなくてはいけないと思っています。
また、原料が安くても加工賃が高ければ、費用ひいては価格が上がってしまいます。現在稼働しているパン工場は、半導体や自動車などを扱う工場よりも、ハイテクな技術を使用している訳ではないと感じています。カメラやセンサーを使った自律的に行動できるフィジカルAIの技術などをうまく活用した、効率的な次世代の製造設備のプロデュースなども手掛けなくてはいけないと思っています。
またグローバルな視点で言えば、香港では、コンビニにベースフードの商品が並んでいるくらい、浸透している状況です。完全栄養のパンやカップ麺は世界を見渡してもほぼないという優位性を活かし、ヨーロッパやアフリカ、ひいてはミャンマーなどの東南アジアにも行き渡るような供給網を構築できればと考えています。
吉岡:お話を伺っていると、世界中で食べられている未来が想像できますね。
橋本:味に世界一厳しい日本で、美味しさと健康で評価されていることも自信に繋がっています。私たちもJHもそうですが、かなり難しいミッションでも物事を極めてしまう日本人的なきめ細やかさが、これから生き残るポイントじゃないかと思います。少子高齢化が最も進む日本で、健康寿命が世界トップクラスの社会インフラを輸出産業として世界に送り出せれば、何より世界でより尊敬される国になれると思うんです。混迷化が加速する国際情勢の中での日本の外交政策にしてみても、金銭的な援助だけよりも人の命を救い世界各国の人達からリスペクトされることが、大事だと思います。

吉岡:日本と途上国との関係もそうですが、私たちが活動を通して、色々な国や人がフェアに協力し合う関係が広がるといいですね。昨年新しくできたジャパンハートアジア小児医療センターでは、2030年を目標に現地のスタッフを中心とした運営を目指しています。また、現在はカンボジア国内からしか患者さんを集めていませんが、隣国からも治療を受けられるようにしたいと計画していて、現在は小児がんを専門としていますが、それ以外の治療についても可能な病院にしていきたいと考えています。子どもたちが入院中も学びが得られる院内学級も新しい試みとして始まっていて、子どもたちを単なる患者として扱うのではなく、一緒に未来を創る仲間として共に成長できる環境をつくり始めています。
橋本:私たちの支援の継続もそうですが、今後はさまざまな分野の企業、例えば教育系や高齢者ケア、途上国向けの小額融資のスタートアップなどをJHさんへ繋げていければと考えていて、新たな協働から新しい価値が生まれればいいと思っています。
現地コミュニケーションでは、母国語のほかに英語を使っていますよね。語学留学の分野はビジネスの観点からもボリュームがあるので、例えば大学生が医療サポートのボランティアをしながら、英語も実践的に学べる場になると思うのですが、いかがですか。

吉岡:なるほど。橋本さんは色々な情報にアンテナを張っておられるので、刺激的で勉強になります。ずっと話を聞いていられる(笑)
医師の役割って公衆衛生などさまざまありますが、私たちの医療は、どんなにエリアが広がったとしても、目の前の一人ひとりの患者さんへ自分のできる最大限のことをすることだと思っています。少しでも可能性があるなかで、目の前の患者さんに何をするか。ずっと考え続け向き合い続けるためには、本当に「食」って大事だなと改めて思うんです。その部分に手をさし伸べていただけるのは、本当に有難いなと思いますね。
そうした支えがあることで、現場で働く一人ひとりの余力が生まれ、「あと、もう一人」の患者さんに向き合う力につながっていく。そして誰かの一日が少し良くなる。その連なりが、やがて社会全体を少しずつ変えていく。そうした変化を共に生み出していける関係でありたいと考えています。
(文章構成:江藤あつし)
