活動レポート
カンボジア
2026.07.13
ジャパンハートの海外医療現場には、メディカルチーム(MT)として長期間、現地で活動する日本人医療者がいます。
今回は、MTとして2026年の2月からカンボジアでの活動を開始した、早川竜生看護師に、ジャパンハートでの活動に至るまでの経緯や、現在の活動についてお話を伺いました。

看護師として働く母親の姿を見て育った早川看護師にとって、看護師という職業は幼い頃から身近な存在でした。さらに、ジャパンハートの創設者である吉岡秀人医師が出演したテレビ番組を見たことがきっかけで、いつしか海外で活動する医療者に憧れを抱くようになります。
その後、高校生になり進路を考えた際には、迷うことなく看護師になる道を選びました。母親からも「看護師に向いている」と言われるほど、誰かの力になりたいという思いが強い彼にとって、看護師はとても魅力的な職業でした。
日本で看護師として経験を積み、基礎を身につけてから海外に挑戦しようと考えていた早川看護師。看護師5年目を迎えた頃、海外で働くことを決意します。しかし、新型コロナウイルスの流行により、その夢は一旦断念せざるを得ませんでした。
そんな中、転機となったのが、2023年にカンボジアを訪れたことでした。ボランティア活動を通して、経済的な理由から十分な医療を受けられない人々が多くいるという現実を目の当たりにしました。一方で、たとえ裕福ではなくても、食べ物を分け合い、温かく接してくれるカンボジアの人々の優しさにも触れます。当時はカンボジアで働くことを考えていたわけではありませんでしたが、「いつかまたカンボジアに来るだろうな」と漠然と感じていたといいます。
その翌年、ジャパンハートのメディカルチームであれば、離島で半年間活動した後、カンボジアで1年間医療活動に携われることを知ります。海外で医療活動を行うという長年の目標と、再びカンボジアに関わりたいという思いが重なり、参加を決意しました。

離島の病院では、人手が少ないだけでなく、物資も限られています。様々な制約がある中で、何ができるかを考えながら医療を提供しなければなりません。そのような環境で働いているうちに、これまで当たり前だと思っていた医療に対する考え方が必ずしも正しいわけではないと気づきました。
彼は離島での経験を振り返り、「医療に対する常識を覆されたことが、カンボジアで働くうえでもとても活かされている」と語ります。半年間の離島での経験は、文化や医療環境の異なるカンボジアで活動するための大きな土台となりました。
しかし、カンボジアでの経験は彼の価値観をさらに変化させることとなります。

日本では、様々な検査や治療を受けられる体制が整っており、多くの人が少ない負担で医療を受けることができます。しかし、カンボジアでは、患者さんの経済状況も考慮しながら、できる範囲の検査や治療の中で医療活動をしなければなりません。カンボジアで働き始めた当初は、「日本であればもっとできることがあるのに」と無力さを感じていたといいます。
そんな中、ある患者さんとの出会いが、早川看護師の医療に対する考え方を一変させました。
ある日、JHMCに重症の患者さんが来院しました。しかし、その患者さんに対してJHMCで提供できる医療には限りがありました。そのため、彼の考える選択肢の中には、「JHMCでできる限りの治療を続ける」もしくは「より設備の整った病院へ転院する」という2つしかありませんでした。しかし、患者さんとそのご家族が選んだのは、
「治療をやめて家に帰る」
という決断でした。
それは、早川看護師にとって想像もしていなかった選択でした。
日本では、最後まで治療を続けながら、病院で最期を迎えるケースも少なくありません。
一方でカンボジアでは、家族とのつながりを大切にする価値観が根付いており、最期は家族とともに自宅で過ごしたいと考える患者さんも多くいます。
この経験を通して、早川看護師は医療活動を行う上で、単に治療を提供するのではなく、患者さんとそのご家族にとって何が最善なのかを考えることが大切だと気づいたといいます。「治療をやめて家に帰る」という選択も、一つの医療のあり方であると考えるようになりました。

病院で働くスタッフの多くがカンボジア人という環境の中で、早川看護師は日々現地スタッフと協力しながら活動しています。カンボジアの文化や価値観を尊重しながらも、日本人だからこその視点を大切にしているといいます。一見うまく機能しているように見えることでも、改善できる点がないかを常に考え、日本人だからこそ気づけることもあると感じているそうです。

海外で医療者として働くという長年の目標を実現させ、カンボジアで人々のために医療活動を行う早川看護師。現状に満足することなく、現地スタッフや患者さんと向き合いながら、よりよい医療の実現に向けて、日本人としてできることを模索し続けていきます。
長期学生インターン
岩橋 雅