活動レポート
ラオス
2026.10.20

ラオスの首都、ビエンチャンの国立こども病院で小児がんの治療に携わる根釜看護師。ラオスで知った現実と、これから実現したい未来についてお聞きしました。
【ラオス】【根釜看護師インタビュー・前編】ラオスで小児がんに向き合う―0からプロジェクトを進めてきた看護師の想い
ラオスは治療に対してまだまだ伝統文化が残っており、地方では特に祈祷で病気が治るという考え方が根強いです。
小児がんプロジェクトは対象疾患が少ないうえ、そういった理由でなかなか患者さんにも出会えないなか、ソンサイ君という腎芽腫の子と出会いました。

患者さんあってのプロジェクトなので、実際に患者さんを目の前にしたことでスタッフや先生も本気になり、治療の過程でも改善を重ねながらプロジェクトとして動きだしました。
ソンサイ君は今一年間の闘病生活を終えて、家で家族と一緒に過ごしています。
ソンサイ君のエピソードを通じて、文化や価値観、信じるものが違っていても、選択肢の一つとしてちゃんと治療すれば助かるということを示し続けていくのが大事だなと感じました。
先日、退院したソンサイ君の家を訪れたのですが、ソンサイ君とご家族だけでなく、親戚も30人くらい集まっていました。
その時に「ソンサイ君は、自分たちの子どもでもあるし、小児病院の子どもでもあるし、ジャパンハートの子どもでもある」と言われて、僕らがやってる意味とか、命が繋がっていくんだなということを実感しました。

そうですね、始まったからこそ見つかった課題もありますし、次のステップへ進めているところもあります。
地方との連携は以前から出ていた課題ではあったのですが、小児病院と関係が築けないうちは地方連携も難しい状況でした。
ただ、小児病院でソンサイ君の治療を終えたことで小児病院が理解を示してくれたので、今は地方の診療にも行くことができるようになりました。
この関係を築くまでも2年かかったので、やはりすごく時間はかかるなと感じますね。
他にも、ラオスの一番南の地方病院で出会った患者さんがビエンチャンまで来てくれて、無事手術が終わりました。
術後は化学療法をして、あと半年の治療を終えればまた家に戻れるので、本当に来てくれて良かったなと思います。
ラオスの人からしたらビエンチャンに来ることだけでもすごくハードルが高いのですが、その子が、治療すれば助かるというのを僕らにもその家族にも見せてくれました。
大変でしたが、ゼロイチで決まりがないからどんどん動き、課題が出てきたら対処を考えて進んできました。決まりがないなかでやっていくのは自分に合っているのかなと思います。
小規模だからこそ皆で協力してできるし、それが目に見えて分かるのが良い点ではないでしょうか。
甲状腺と小児がんの2つのプロジェクトがあるので、それぞれ自分の担当プロジェクトにフルコミットしたい気持ちはありつつも、お互い調整しながら皆で両方を動かしています。
誰も欠けてはいけない存在になっていて、アットホームなところが良いと思います。
患者さんを探すところから自分たちでやっているので、治療できるのが当たり前じゃないということの共通認識を持っているし、患者さん一人ひとりと深く関われるのも良いところです。
例えば、先ほども挙げたソンサイ君だったら、治療だけじゃなく日本の文化を知ってもらう機会を設けたり、パーティーをしてお母さん、お父さんにリラックスしてもらえる時間を作ったりしました。
他にも、南の病院からビエンチャンに治療に来ている子のお母さんは、当然ながらここには知り合いが一人もいません。
そんな不安なお母さんのために一緒にお出かけしたり、ラオス人スタッフから生活のことをいろいろ伝えたりもしました。
治療だけじゃなく生活面も含めて、僕らに出会えて良かったと思ってもらえるような濃い関わり方ができるのは、患者さんの人数が多くないからこそできることだと思うので、その点が強みだなと思います。

ラオス国内ではまだ手術事例のない肝臓の手術=肝臓切除をやりたいとずっと考えていたのですが、今年12月に手術を実施予定です。今まではメインターゲットであるにも関わらず肝芽腫の子に出会えていなかったのですが、ついに実現することができそうです。
過去には患者の紹介もあったのですが、無症状だからという理由で、それこそ信じるものが違って治療せずに帰ってしまったことがありました。今治療すれば助かるとどれだけ説明しても症状がないとなかなか治療へと進められず、もどかしさを感じます。
なので、今回手術をして、こうやって治療すれば命が助かるということをラオス国内にも広げていければ大きなインパクトになるし、選択肢の一つとしてこういう治療が必要だという理解が浸透していけばいいなと思います。
また、地方に住んでいる子どもがビエンチャンで治療するためには、家族も仕事を辞めて1年間ビエンチャンに来ることになるため、ハードルが高いのだと思います。
今の生活をとるか、子どもをとるかという、究極の二択になってしまうんですよね。
若い親も多いので、その子を頑張って治療するよりは新しい子を産んだ方が早いとか、そういう考え方になってしまうこともあります。
僕らにとっては今の医療は当たり前ですが、ラオスの地方だと外との接点が本当にないので、いまだに古い風習や慣習が強いと感じます。
そうですね。グーグルマップにも載っていないようなところから来ている人たちもいるんです。
例えば、僕らだったら麻痺が出たら医療者じゃなくても「頭の病気かもしれないから、すぐに病院に行かないといけない」と思うのですが、ラオスの地方やカンボジアだとその感覚がないのです。
化学療法と伝えても理解してもらえないですし、一から噛み砕いて説明しないといけない場面も多いです。
そのようななかでも救うことができた命はこの2年間で確実に増えているので、やはり選択肢の一つとして治療ができるというのは理解を広げていきたいですね。
