活動レポート

カンボジア

2026.07.20

【カンボジア医療活動】小児がん患者story -親子で歩んできた1年-

2026年7月から開始した、AC支援キャンペーンのメインビジュアルに出演してくれたキビン君。
今回はキビン君のストーリーとともに、AC支援キャンペーンエピソードもあわせてお届けします。

キビン君は、人懐っこい性格で、とにかくやんちゃな5歳の男の子です。いつも身振り手振りを交えながら、豊かな表情でおしゃべりをしてくれます。クメール語が伝わらない日本人スタッフに対しても全力で気持ちを伝えようとしてくれる、そんな愛くるしい姿がキビン君の魅力です。

ジャパンハート【カンボジア医療活動】小児がん患者story ー親子で歩んできた1年ー

また、インターンである私がまだ環境に馴染めていなかった初めのころ、最初に声をかけてくれたのがキビン君でした。私の手を引いて一緒に遊んでくれたキビン君は、ずっと張りつめていた私の心をほぐしてくれました。

キビン君は、ゲームをすることや、動画をみることが大好きで、普段からスマホに夢中になっているところをよく見かけます。スマホがないときには、病棟内を歩き回って、いろんな人と遊んでいます。

そんなキビン君は、2025年6月にジャパンハートアジア小児医療センターへやってきて、現在も小児がんの一種であるウィルムス腫瘍と闘っています。ウィルムス腫瘍とは、主に乳幼児や小児の腎臓に発生する悪性腫瘍の一種です。小児の腎臓がんの中で最も多くみられ、腎芽腫とも呼ばれます。

ジャパンハート【カンボジア医療活動】小児がん患者story ー親子で歩んできた1年ー

見過ごしてしまった小さなサイン

最初に異変を感じたのは、食欲の変化でした。少しずつ食べる量が減ってきていましたが、お母さんは当時仕事が忙しく、大きな病気だとは思わず、様子を見る日々が続いていました。振り返れば、この小さな変化が、病気だと知らせる最初のサインでした。

その後、キビン君が「おしっこに血が混ざっている」と話したことがありましたが、お母さんは冗談だと思い、信じることができませんでした。

それから2、3か月後、再び血尿が見られました。今度はバケツに採った尿を見て、血が混ざっていることを確認し、近くのクリニックを受診すると腎臓に腫瘍が見つかりました。さらに詳しい検査をするために受診したプノンペン市内の病院で、ウィルムス腫瘍と診断され、1か月ほどの入院ののち、ジャパンハートを紹介されてやってきました。

キビン君の病気がわかった時のことを、お母さんはこう振り返ります。
「心が張り裂けそうでした。何も食べられなくなり、私自身も5kgほど痩せてしまいました。とにかく不安でいっぱいでした。」

不安が安心へ変わる場所

初めてジャパンハートへ来たとき、お母さんの胸にあった抱えきれないほどの大きな不安。
前の病院は大きな病院だったにもかかわらず、治療が難しいと告げられたこともあり、本当にここで治療を受けられるのだろうかという思いだったといいます。

しかし、その不安は少しずつ安心へと変わっていきました。

同じ病気と闘う周りの患者さんの存在。
キビン君を励まし続けてくれる医療者の存在。
そうした存在が、お母さんの心をあたたかな気持ちにさせてくれたことで心の落ち着きを取り戻し、次第に入院生活を明るい気持ちで過ごせるようになりました。

「こうして大きな安心を感じられるのは、第一に、無償で治療を受けられること。そして何より、医師や看護師、スタッフが優しく、病気と闘う息子のことをいつも応援してくれることです。病院の生活で心配なことは何もありません。」

今は、笑顔でそう語ってくれるお母さん。それから、ジャパンハートを応援し活動を支えてくださる方々に対しても「心より大きな大きな感謝を申し上げたいです。本当にありがとうございます。」と、大きな謝意を伝えてくれました。

もちろん、闘病生活にはつらいことも多くあります。

キビン君はこれまで、抗がん剤治療を受けながら、腎臓の腫瘍を摘出する手術も乗り越えてきました。「ちゅうしゃ(採血)とくすり(抗がん剤)は、きらい」と秘密をささやくように教えてくれたキビン君。その小さな体で、痛みや苦しさと向き合いながら、一つひとつの治療を懸命に乗り越えてきたのです。

入院中一番嫌だったことはやはり治療かな、とキビン君に聞いてみると、少し首をかしげてから静かに一言。

「おうちにかえれないこと」

キビン君の実家は、病院から3時間ほど離れています。
家では、お父さんと1歳年下の妹が、キビン君とお母さんの帰りを待っていてくれます。
お母さんも、「(治療のためとはいえ)子どもたちを一緒に育ててあげられなかったのがつらい」と、その胸中を語ってくれました。

それでも日々の闘病生活の中で、キビン君自身の、病院での楽しかった思い出についても話してくれました。

「(乗用可能なラジコンの)くるまにのったのがたのしかった!また、のりたい!」

ジャパンハート 【カンボジア医療活動】小児がん患者story -親子で歩んできた1年-

また入院中にもらったくまのぬいぐるみは、毎晩一緒に眠る大切な存在です。見当たらなくなると心配して探し回るほど、キビン君のお気に入りになっています。

闘病中であっても、自分のすきなこと、すきなものを安心して「すきだ」と言える。
そんな子どもたちにとって当たり前のことを当たり前にできる安心した環境づくりを、私たちは目指しています。

笑顔あふれる未来へ

ジャパンハートへやってきてから1年以上。
長い治療を乗り越え、キビン君はついに退院の時を迎えようとしています。

今後の検査で転移が認められなければ、退院となる予定です。
退院後は月に一度病院へ通いながら、経過を見守っていきます。

キビン君がこれからすこやかに成長し、大人になれますように。
未来が明るく、笑顔であふれるものとなりますように。
そして、その人懐っこい笑顔でこれからもたくさんの人に笑顔を届ける存在でありますように。

キビン君の「もうすぐおうちにかえれる!うれしい!」という笑顔と、「まだ気が早いでしょ?」とやさしく微笑むお母さん。

私たちは、これからもこの2人の笑顔を守り続けていきたいと思います。

長期学生インターン 瀬﨑未彩

◆ AC支援キャンペーンエピソード ◆

ジャパンハート【カンボジア医療活動】小児がん患者story ー親子で歩んできた1年ー

メインビジュアルの撮影をACMCの子どもたちのなかから誰にお願いするかは、とても悩みました。

病状が安定していることは大前提でしたが、ある程度の時間撮影に耐えられること、そして大勢のスタッフの中でも臆することなく撮影にのぞめること…ハードルの高い条件のなか、白羽の矢が立ったのがキビン君だったのです。

 

ACMCで初めて対面したキビン君はとっても明るく、初対面の私たちにもまるで顔見知りかのような人懐っこさで接してくれました。

カメラの前でも緊張することなく、とびきりの笑顔を見せてくれたキビン君。「疲れないかな、体調が悪くならないかな」と心配していましたが、楽しそうに撮影に臨むキビンの姿に心からホッとしたのを覚えています。

 

もうすぐ退院と聞いて、とても嬉しくなりました。
よかったね、キビン君!彼の未来が明るく開かれたものであるよう、日本から祈っています。

 

広報 細谷直子