活動レポート
支援者の声
2026.06.18

ジャパンハートは、完全栄養の主食を開発・販売するベースフード株式会社と、活動の舞台である東南アジアの各拠点へ製品の提供を主としたパートナーシップ契約を結びました。
医療業務の合間に手軽にパランスのよい栄養を補えるパンなどを取り入れることで、医療・支援活動を下支えすることを目指し、その取り組みの一つとしてベースフードの「BASE UP PROJECT」が掲げる心身の健康の“ベースアップ”を体現するものです。
この機会に、ベースフードの代表取締役である橋本舜さんと、ジャパンハート理事長の吉岡春菜の対談が実現しました。2回に分けてお送りします。
※本記事はベースフード株式会社と特定非営利活動法人ジャパンハートの共同配信記事となります

Q:お二人が最初に会ったのは、どのような状況だったのですか?
橋本:経営者の集まるビジネスカンファレンスで、ジャパンハート(以下、JH)のブースに立ち寄ったのが始まりですね。まずは患者さんの栄養バランスが整っていないと、治せる病気も治しにくいのではないかと考え、自分たちのプロダクトである栄養食で何かしらの貢献はできるんじゃないかと思ったんです。

吉岡:私たちもベースフードのブースにお伺いしていました。
橋本:そこで、実際に活動現場でカンボジア・ミャンマー視察ツアーに参加してみませんかとお誘いを受けて、我々だけではハードルが高い地域でしたから、貴重な機会だと参加しました。
Q:ツアーに参加されて印象に残っていることはありますか?
橋本:普通に日本に暮らしていると想像がつかない、自分からしたら極限的な環境でしたね。現地の病院は外から見れば一見保育園のようですが、半年後にはこの子たちの何人かは亡くなっている現実があります。私も子どもがいるので、胸に迫るものがありました。
でも悲観的ではなく、明るい雰囲気があったのは印象的でした。私も社員も、衣食住が満ち足りた世界に生まれたのが、大前提であることに無自覚だったなと。会社経営に起こるあらゆることが問題と思わなくなりました(笑)
Q:JHに対する印象にも変化がありましたか?
橋本:正直、寄付という行為は、自分からは縁遠いものでした。事業自体が社会貢献事業と思っているので、我々なりに一隅を照らす活動をしていると思っていました。
けれど、JHとの出会いで、寄付というとお金のイメージが先行するけれど、突き詰めると自分のためにやることじゃないかという想いに至ったんです。多分吉岡秀人先生やJHの取り組みも、自分たちのためにやっているというところがあるんじゃないでしょうか。
言い方が悪いかもしれませんが、ストリーミングとか月額いくらとかのコンテンツで心を癒そうとしているけど、それって幸せなのかなと思ったりして。それだったら、JHに月額支援することで自己肯定感も高まると思うし、活動報告を読んで自分ももっと頑張ろうと思える訳じゃないですか。発想の転換で、自分たちのためにやっていることが、一見利他的な活動に映る部分もあるんじゃないかと思います。
吉岡:「自分のためにやっている」「結果的に利他になっている」というのは、吉岡(秀人)も常日頃から言っていますね。

Q:理事長から見た、ベースフードのプロダクトや活動の印象はいかがですか?
吉岡:食で社会課題を解決する、しかも主食を変えたいというところで、どういうことかなと最初は思ったんです。昔ながらの主食である雑穀などを取り入れながら、完全栄養をひとつのパンで摂取できるという、大変なことにトライしていると感じました。
自分の子どもが大きくなって家に居なくなると、手間を省いて食がすごくお粗末になるんですよね。小さなお子さんがいる若い家族でも、保育園などに持たせるお弁当の野菜の品数を気にしたり、忙しいご両親の食事の場面で、ベースフードのパンや麺の利用は、栄養面だけでなく、心の部分でも負担が軽くなるだろうなと感じています。
橋本:おっしゃる通り人生を軽くすることは、大事だと思っています。私は就職の時に東日本大震災があった世代でもあるし、バブル時代のように上り調子であったわけじゃないので、普段から生活を軽くしておくことで、何かあった時の柔軟性を持ち合わせておくことに繋がっていると思います。例えば「雑穀は過去の食品」とか、社会文化的に自分が縛っている固定観念も同じように、現代の生活に合わせながら、合理的に開放していくところも大切にしていますね。

Q:そんなベースフードの起業コンセプトは、どんな経緯で生まれたのでしょうか?
橋本:前職でも新規事業を立ち上げる立場にあったのですが、日本における最大の社会課題の少子高齢化、特に高齢化対策で起業しようと考えました。その課題解決において、健康寿命を伸ばすことが最も重要と考えました。健康寿命を伸ばすことができれば、医療費も介護費も抑制できる。それに伴って労働力も増える。何より人が幸せだと思うんですよ。
現代の日本では、寝ずに働くとか、健康診断を受けないという人は減り、スポーツ習慣を持つ人も増えている。一方で栄養バランスは、日本的な一汁三菜から、共働きや一人暮らしの若い世代や高齢者も増え、牛丼やカレーなど主食主菜に偏った食事が増えています。
であれば、栄養と食材のバランスがよく、現代のライフスタイルに合った主食を製品化すればいいのではと考えました。イタリアンのレストランだと、パスタソースはすごく多様なのに、パスタの原料は同じって不思議だと思いませんか?「こうでなきゃならない」と思い込んでいるものって、イノベーションの種になったりするんです。
日本人がラーメンを食べて健康になるとか、アメリカ人がハンバーガーを食べて健康になれば、世の中の大部分の問題が解決される。食の概念が変わる歴史的な大きな話に、ベットできるのは魅力的に感じました。
起業した当時は、周囲からパスタやパンで起業するのは、相当クレイジーだと思われていました(笑)ただ、全然そんなことはなくて、主食もそうですが、今の時代に当たり前だと思われているものには、改善の余地があるものばかり。スタートアップ企業が切り込んでいける部分がすごく多いと思います。
Q:主食で起業することがクレイジーなら、30年前に吉岡秀人が一人でミャンマーで医療活動していたことも、相当にチャレンジングだったなと改めて思いました(笑)。そんなJHの出発点と医療活動で大切にしている部分をお教えください。
吉岡:私たちの活動を端的に言えば「医療が届かないところに医療を届ける」ということです。スタートは1995年に吉岡秀人が、第二次世界大戦でミャンマーへ従軍した日本兵の九州慰霊団に依頼されて、現地の医療支援を行う医師として同行したのがきっかけでした。
彼は、もう誰がとめようと現地で医療援助しないと生きている意味がないくらいの意気込みだったんですね。現地入りしてもミャンマー政府からの許可がなかなか下りず、半年間くらいはずっとミャンマー人のお宅の軒下で雨宿りしながら医療活動をしていたんです。ミャンマーにいる一番貧困な日本人と言われていたそうです。
その後もさまざまなミャンマーの方にご縁をいただきながら、カンボジア、ラオスにも活動を広げ、30年継続して活動を続けて現在に至っています。
現地は医療保険制度が確立していないので、日本だと10分程度で手術が終わり、まず助かるような子どもたちが、あっけなく死んでしまうこともありますます。ですから地域が拡大したとしても、これからも変わらずに一例一例丁寧に向き合っていくことが大切だと思っています。現在までで、大人を含めて40万を越える症例をJHで治療してきました。

橋本:もちろんJHスタッフの皆さんへのリスペクトは必要ですが、現地活動に対して寄付する側は、推し活くらいに敷居を低くしてサポートしてもいいと思っています。
例えば、駅前で弾き語りをしている人に「何でそんなことをしているの?」「もっと社会のために具体的に貢献しないの」とは問いませんよね。単純に自分たちにはないクリエイティビティや取り組みに魅力を感じて投げ銭をしたりする。自分にはできないことをしている人と繋がって経験や価値観が広がることって、個々の生活や人生にとても大きなものをもたらすと思うんです。
吉岡秀人先生もそうですし、現地の日本人スタッフも過酷な環境下で患者さんを治療するような生活を送られている一方、マスクをとってお話すると私と変わらない同世代の日本人だったりします。やっぱり単純にすごいし、かっこいい。その行為に対して、寄付を通して応援する感覚でいいと思います。気軽な気持ちの寄付でも、実際に救われる命があることは、揺るぎない事実なので。

Q:「BASE UP PROJECT」の一環として今回はJHと協働している訳ですが、そのプロジェクトへの想いなどをお聞かせいただければと思います。
橋本:夢を実現するために頑張っている方々、そしてサステナブルな社会の実現に向け、栄養や健康という側面から応援、サポートし、「明日の笑顔を皆さんと共に」という想いが込められた、私たちの行動原理になっているプロジェクトです。
もともと、社会全般の健康に貢献したい想い、その中でも自身の仕事にちゃんと向きあっている人ほど食生活をケアできない状況で、そのような人の健康な食生活をアシストすることが私たちの責務だと思っています。
プロジェクトのの一環で、新しい分野を切り拓く芸術家やスポーツ選手、また被災地への支援がいくつかあるので、社会貢献セクターであるJHとは、すでに動いているプロジェクトのフォーマットを活かすことでパートナーシップを組みやすかった背景もあります。
ただプロジェクトありきというよりも、実際にJHの取り組みをカンボジアで見学して、せっかくなら支援したいと気持ちの方が、今回の協働の理由としては大きいですね。
なので実際に(JHがベースフード商品を)求めてくれたのは、単純に嬉しかったし、活動するスタッフさん自体が必要としてくれるのは有難かったです。私たちにとって、食べてくれる人が必要としてくれることが、商品をより良くするモチベーションになります。そんな切実に必要としている現場に、もっといいものを届けられる会社にしなくてはいけないと思いますね。

Q:JHの活動にとって、ベースフードのプロダクトによって生まれた変化や影響を教えてください。
吉岡:今回の取り組みで特にありがたいと感じているのは、患者さんだけではなく、私たちの医療従事者を支えていただいているというところです。例えるなら、希望の光ですね。
こうした支えがあることで、もう一歩踏み出せる瞬間が生まれ、そしてその一歩が患者さんにとっての大きな違いにつながっていく。医療従事者を支えることが、結果としてより多くの命を支えることにつながっていると感じています。
私たちは手術の時間が伸びると、空腹で血糖値が下がった状態になってしまいます。終わってすぐに食事しようと思っても、大体口にするのはフルーツくらいなので、血糖値もすぐ戻ってしまいます。次の患者さんの前にベースフードのパンなどを食べられるのは、ゆっくり血糖値も上がって、目の前の手術に集中できますよね。
私は現地へ行くと、感染症に罹ってしまうことが多いんです。環境も水も違うし、気を許して食べてしまった物が原因だったり。カンボジアだと小児がんの子たちと接するので、感染症を持っていると病棟に入れません。活動の基礎になる免疫力を保っておくにも、ベースフードの食品はとても良いと思います。

橋本:アスリートの皆さんも、海外遠征に持っていってくれるんです。栄養バランスもそうですが、ライフスタイルを変えなくていいこと、またパッケージされたものなので衛生面が担保されますから。お腹を壊したら、競技に大きな支障が出てしまいますので。
吉岡:「助けてくれる人、頑張る人を、助ける食」ですね。私たちの活動と、とても繋がりを感じます。私たちが取り組む途上国の小児がんの生存率を上げる目標には、いち早く医療機関に繋げる仕組みをつくることが必要です。その活動を担う医療従事者の食を支えてもらうのは、非常に有難いです。
橋本:私たちにとっても有難くて、社員含めて何のために事業をやっているか、誰のためになっているかが明確になることは、日々の業務を継続する上で重要です。感謝されることが、メンタルヘルスでも大きな助けになっています。売上や利益だけを追いかけていると正直、気持ちが続きません。そもそも何のためにやっているのか、原点に立ち返れることに、私たちこそJHの存在に感謝しています。

ベースフード株式会社CEO 橋本舜×特定非営利活動法人ジャパンハート理事長 吉岡春菜 トップ対談 [後編]もお楽しみに。
(文章構成:江藤あつし)