活動レポート
カンボジア
2026.05.18
長期ボランティア医師として約9年にわたり、カンボジアで活動を続けてきた嘉数真理子医師。多くの患者と向き合いながら、現地スタッフと共に病院づくりや人材育成にも力を注いできました。日々の診療や手術、その何気ない会話の中で、彼女は現地スタッフたちにとってどのような存在になっていったのでしょうか。今回、長年共に働いてきた3名のカンボジア人スタッフに話を伺いました。

2019年11月、初めて嘉数医師に出会ったというポアン医師。彼女について、「真面目で規律正しく、常にしっかり準備をする人だった」と振り返ります。また、仕事だけでなく人生そのものを楽しんでいる姿も印象的だったと話してくれました。
嘉数医師は、日頃からスタッフ一人ひとりを気にかけ、常に励ましてくれる存在だったそうです。出会った当初は主に、化学療法のオーダーや投与量の計算を担当し、治療計画書や薬剤投与量を厳格にダブルチェックしていました。その姿勢からは、患者さんの安全を何よりも大切にする強い責任感が感じられたといいます。ポアン医師自身も、嘉数医師へ確認を依頼する前には何度も慎重に工程を見直すようになり、その働く姿勢から多くを学んだと語ってくれました。
「彼女はとても経験豊富で、仕事に対して献身的な医師でした」とポアン医師は話します。学ぶ意欲のある人には丁寧に知識を共有し、質問があればいつでも説明をしてくれる存在でした。また、助けや指導を必要としているスタッフを支え続けていたといいます。嘉数医師との日々を通して、ポアン医師は患者管理だけでなく、自信やチームワーク、組織力についても多くを学んだそうです。

初めて嘉数医師に会った時、ブティ看護師は「患者さんの安全を何よりも大切にしている人だと感じました」と振り返ります。高い集中力を持ち、規律を重んじながら仕事に向き合う姿から、当初は少し緊張していたそうです。しかし、共に働く時間を重ねる中で、努力家で献身的な一面や、周囲をさりげなく支える優しさにも気づいていったと話してくれました。表立って感情を見せるタイプではないものの、その行動の一つひとつから深い思いやりが伝わってきたといいます。
特に印象に残っているのは、緊急時に共に働いた経験でした。緊迫した状況の中でも、嘉数医師は常に冷静さを失わず、的確に状況を整理しながらチームを導いていたそうです。その姿は、ブティ看護師自身にとっても大きな安心感につながっていたといいます。「先生の自信と判断力を見て、自分自身ももっと集中して働こうと思えました」とブティ看護師は話してくれました。また、患者さんが亡くなられた際には、嘉数医師も深く悲しみ、その喪失と真剣に向き合っていた姿が今でも印象に残っているそうです。
「嘉数医師は、とても思いやりの深い先生でした」とブティ看護師は語ります。多くの患者さんやその家族に希望を与えてきただけでなく、医師だけではなく看護師にも積極的に知識や技術を共有し、成長を支えてくれる存在だったといいます。ブティ看護師自身も、責任感や集中力、患者安全を最優先に考える姿勢、そしてどんな状況でも冷静さと思いやりを失わない大切さを学んだそうです。嘉数医師の姿は、「自分ももっと努力し、患者さんに寄り添える医療者になりたい」という強い思いにつながっていると話してくれました。

2018年に初めて嘉数医師に出会ったというシーパン医師。彼女について、「優れたリーダーであり、とても努力家で責任感の強い方でした」と振り返ります。また、知識や経験を惜しみなく共有しながら、スタッフ一人ひとりを丁寧に指導してくれる存在だったと話してくれました。
リーダーとして、嘉数医師は常に周囲を励まし続けていたそうです。「できる限り挑戦してみよう」「あなたならできる」といった言葉を何度もかけてもらったことが、今でも強く印象に残っているといいます。困難な状況の中でも前向きな気持ちを持ち続けることの大切さを、嘉数医師の言葉や姿勢から学んだとシーパン医師は語ってくれました。
「嘉数医師は、私たちの病院を大きく発展させた中心的な存在でした」とシーパン医師は話します。何もない状態から現在のような体制を築き上げ、多くの患者さんの役に立つ診療科へと成長させてきたことは、とても大きな功績だったと感じているそうです。シーパン医師自身も、一般医から小児がんについて深く理解する医師へと成長する過程で、多くのことを学んだといいます。より努力すること、責任感を持つこと、そしてチームをより良くマネジメントする力は、嘉数医師と共に働く中で身につけた大切な学びだったと話してくれました。

嘉数医師がカンボジアで過ごした9年間は、単に患者さんを治療する時間ではありませんでした。日々の診療や現地スタッフとの関わりを通して、知識や技術だけでなく、患者さんに真摯に向き合う姿勢や、チームで支え合うことの大切さを伝え続けてきました。
「あなたならできる」と励まし続けてくれた言葉や、困難な状況でも責任感を持って行動するその背中は、今も現地スタッフたちの中に深く残っています。嘉数医師が築いてきたものは、これからもジャパンハートカンボジアの医療と共に、次の世代へと受け継がれていきます。