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活動レポート

医療活動 

「最後までここで診て欲しい」 (内科医:進谷より)

2018.08.02

 

少し前になりますが

2018年790455

カンボジアで初めて1人の患者さんの最後を看取りました。

その女性は37歳という若さでこの世を去りました。

 
元々プノンペンの大きな病院で原因不明の重症慢性心不全で治療を受けていた彼女ですが
経済的に貧しく治療を継続できなくなり、僕が活動するAsia Alliance Medical CenterAAMC)を訪れました。
 

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初めてお会いしたのは5月。

呼吸状態が悪くなり、入院での治療となりました。

いつ急変してもおかしくない、厳しい状態であると、本人、家族にも話しましたが

その時は改善がみられ、退院することができました。

この1ヶ月は自宅で家族と穏やかに過ごされていたそうです。

外来通院の度にお礼にとたくさんのものを病院に持ってきてくださいました。

退院直後の外来では、自身で当院のスタッフ用にお手製のブレスレットをたくさん作ってきてださったり、

時には木製の楽器を買って持ってきてくださったり。

旦那さんも娘さんも良い方で、いつも3人で病院にきていました。

いつも笑顔をいっぱいで受診してくれる彼女に、僕の方が癒されていました。

 

そんな彼女の状態が急変したのが78

その日は僕は休みの日だったのですが、AAMCスタッフが連絡をくれて駆けつけることができました。

僕が病院についた時には、少しお話ができるくらいの状態にはありました。

ただ、厳しい状態であることは間違いなく、医療資源、マンパワーの乏しい当院では対応が難しい状態でした。

大きな病院への転院または最後を自宅で過ごしたいという希望がある場合には早い時点での自宅への帰宅を本人と旦那さんに提案しました。

 

カンボジアでは「病院で亡くなる」ということが良しとされないことがほとんどです。

亡くなった人=死者を家に招くことが良しとされないようで、

なので、これまでもほとんどの場合、治療が難しいという際には、早い時点で家族が自宅へ連れて帰ることを選択されました。

ご家庭によっては、まだ亡くなっていない間に、お葬式が始まる家もあるとのことです。

 

「今日自宅に連れて帰りたい」

家族や患者さん自身が自宅への退院を選択し、治療の途中で帰ることも少なくありません。

医療者としては

もっと当院で治療できたのではないか

もう少し続けていたら良くなったかもしれない

などといった想いはどうしても残ってしまいます。

帰宅を見送る時はいつも力及ばず、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

しかし、何よりも患者さん、そして家族の「価値観」を優先すべきであり

その見定めの時期は逃さない様にしないといけないと思っています。
 

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少し話は逸れましたが、そういった理由から

今回の患者さんに関しても、自宅に連れて帰ると言われるかなと思っていました。

 

しかし、彼女、そして家族の希望は

「ここで最後まで診て欲しい。ここにいたい。」でした。

 

カンボジアでの価値観を理解しているからこそ

医療者としてどれ程光栄なことか

その言葉の意味するところを強く感じました。

 

その晩は病院に泊まりました。

 

明け方、ちょうどその方のところに夜勤の看護師さんと一緒にいた時に

 

「ガタンッ!」

と突然、少しだけ体を勢いよく起こしたその後、

そのまま苦しむ様子なく、眠るように息を引き取りました。

 

側で眠っていた家族に声をかけ、

 

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彼女の最後の時を見届けました。

 

旦那さんの許可を得て、翌日の勤務後に、スタッフ10数名でお葬式に参列させて頂きました。

お葬式は自宅で催されるということで

その後の旦那さん、そして娘さんのことが気がかりだったこともありますが

それ以上に、その方がどんなところでどのように暮らしていたのか

それを知りたいという想いが一番強かったように思います。

 

病院から車で30分くらいのところにある自宅は

文章での説明は難しいですが

高床式の自宅

その1階部分は2階部分が屋根となっているだけで、壁もなく、屋外でした。

そこに、3-4畳くらいの木の高床の上に茣蓙が敷かれていました。

聞くと、2階部分はご両親が暮らしていて、患者さん家族は1階部分で3人で暮らし、

その茣蓙の上で3人で寝ていたとのことでした。

家族の生活の様子が脳裏に浮かび

外来受診の日には、トゥクトゥクで家の前まで帰って

心臓がわるいため早く歩けない彼女を旦那さんと娘さんが手を取って支えながら、ゆっくりとその高床のところまで連れて帰っていたんだろうなぁ。

あのブレスレットはここで一つ一つ編んで作ってくれたんだろうなぁ。

少しは笑顔で家族と暮らせる時間を提供できたのかなぁ。

などと考えながら、お葬式の間中、想いに耽っていました。

 

僕にとってもAAMCスタッフにとってもとても特別な経験で

それぞれ色んな想いに耽ていたことだと思います。

 

こちらのお葬式では

到着すると席に案内され、お粥やお菓子、ジュースなどを

それらを食べずに帰ると故人のことをあまりよく思っていなかったのかと家族から不安に思われるそうです。

僕らが席について食事を頂いていると、旦那さんが嬉しそうに僕たちの写真や動画をとっていました。

しばらくして、みんなで焼香をあげ、少しばかり、日本でいうところのお香典を包み、その場を後にしました。

終始嬉しそうに笑顔を見せてくれる旦那さんの顔から、AAMCスタッフが如何に献身的なケアを行っていたかということが伝わってきました。
 

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その後も、一部のスタッフからは「もっとこうしてたら」という後悔の相談がありました。

僕自身、「もっと」を言い出すとキリがないくらい悔やむところはあります。

それでも、お金がなく、生活も厳しい彼女と彼女の家族の「最後までここで診て欲しい」

その想いを叶えることができたのは、一つ誇っていいことなのではないかとも感じています。

 

そして、選択肢がないからということもありますが、最後には医療者に委ねず、自分たちで生き方を決めるカンボジアの方々を間近でみていて、

最後に大切なのはやはり家族なんだなと日々感じています。

(「選択肢があれば医療に縋るが選択肢がない」とある人が言っていました。)

この方も場所は病院でしたが、最後までずっと家族がそばにいました。

そこに「正しい」「正しくない」はないのですが、日本も昔はこういう文化があったのかなー。

と、少し寂しくなる時があります。

色々なことが「選択できてしまう」環境にいるからこそ、「何が自分たちにとってより大切なもの」なのか

一人一人が責任を持って選択することが必要となっている気がします。

 

そこに医療者への信頼があって、自分たちで選択して「最後を迎える場所は家族と共にここ(病院)がいい」と言ってくれるのであれば

医療者としてこんなに嬉しいことはありません。




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